事業開発の重要性とその実践における課題

現代のビジネス環境において、企業の持続的成長を実現するためには、既存事業の最適化だけでなく、新たな価値創造を行う事業開発力が不可欠です。しかし、多くの企業が事業開発の重要性を認識しながらも、その実践において様々な課題に直面しています。
enableXは、グローバルに事業開発支援を展開する中で、数多くの企業の成功と失敗を目の当たりにしてきました。本稿では、なぜ事業開発が企業にとって重要なのか、そして、なぜ多くの企業で事業開発力が低下してしまうのかについて、当社の豊富な支援実績から得られたインサイトをもとに解説します。
事業開発の重要性が高まる背景
加速する市場環境の変化
デジタル化の進展、消費者行動の多様化、グローバル競争の激化など、企業を取り巻く環境は急速に変化しています。enableXが支援した製造業A社の事例では、主力製品の市場が5年間で半減するという事態に直面しました。同社は既存事業の効率化だけでは対応できず、新規事業開発に本格的に取り組むことで、2年後には売上の10%を新規事業が占めるまでに成長させることができました。
このように、環境変化のスピードが加速する中で、企業は常に新たな成長機会を探索し、事業ポートフォリオを最適化していく必要があります。事業開発は、この変化に対応するための最も重要な経営機能の一つとなっているのです。
既存事業の成熟化とイノベーションの必要性
多くの産業において、既存事業の成熟化が進んでいます。enableXの独自ヒアリング調査によると、企業の約70%が主力事業の成長率低下を経験しており、新たな成長エンジンの創出が急務となっています。
ステークホルダーからの期待の高まり
投資家、顧客、従業員など、あらゆるステークホルダーが企業の成長性と革新性に注目しています。特に投資家は、短期的な業績だけでなく、中長期的な成長ストーリーを重視するようになっています。
enableXが支援した金融機関C社では、従来型の金融サービスに加えて、フィンテック領域での新規事業開発に積極的に取り組みました。この取り組みは、投資家からの評価向上だけでなく、優秀な人材の獲得にも寄与し、組織全体の活性化につながりました。
事業開発が企業にもたらす具体的な価値

持続的成長の実現
事業開発は、企業の成長曲線を継続的に上昇させる原動力となります。enableXの分析では、積極的に事業開発に取り組む企業は、そうでない企業と比較して、5年間の売上成長率が平均で数倍高いという結果が出ています。
化学メーカーD社の事例では、コモディティ化が進む既存事業に依存していた状況から、高付加価値材料の開発と新市場開拓を同時に進めることで、利益率を15%から25%へと大幅に改善させました。この成功の背景には、市場ニーズの深い理解と、技術シーズの効果的な活用がありました。
リスク分散とレジリエンスの向上
単一事業への依存は、環境変化に対する脆弱性を高めます。事業開発を通じて事業ポートフォリオを多様化することで、企業のレジリエンスを向上させることができます。
enableXが支援した小売業E社は、コロナ禍で実店舗事業が大打撃を受ける中、事前に開発していたEコマース事業とサブスクリプションモデルが急成長し、全体の業績を支えました。この事例は、平時における事業開発投資が、危機時の企業存続を左右することを示しています。
組織能力の向上と人材育成
事業開発のプロセスは、組織全体の能力向上にも寄与します。新規事業の立ち上げには、市場分析、戦略立案、実行管理など、幅広いスキルが求められます。これらの経験を通じて、次世代リーダーが育成されるのです。
なぜ事業開発力が低下してしまうのか
短期業績へのプレッシャー
多くの企業が直面する最大の課題は、短期業績へのプレッシャーです。四半期ごとの業績報告に追われる中で、成果が見えるまでに時間がかかる事業開発への投資が後回しになりがちです。
enableXの調査では、事業開発プロジェクトの約60%が、短期的な収益貢献が見込めないという理由で、途中で中止または規模縮小されています。しかし、成功企業の分析からは、少なくとも3-5年の投資期間を確保することが重要であることが明らかになっています。
既存事業との利益相反
新規事業が既存事業と競合する場合、社内の抵抗に直面することがあります。いわゆる「カニバリゼーション」の恐れから、革新的なアイデアが潰されてしまうケースは少なくありません。
通信事業者G社の事例では、新たなデジタルサービスが既存の通信サービスの収益を脅かすという懸念から、社内の反発が生じました。enableXは、両事業の共存モデルを設計し、段階的な移行計画を策定することで、この課題を克服しました。重要なのは、全社最適の視点から事業ポートフォリオを管理することです。
事業開発人材の不足
事業開発には、特殊なスキルセットが求められます。市場を読む力、ビジネスモデルを設計する力、ステークホルダーを巻き込む力など、多様な能力が必要です。しかし、多くの企業では、こうした人材が不足しています。
enableXの人材アセスメントによると、日本企業の事業開発担当者のうち、必要なスキルを十分に保有している人材は全体の20%程度に留まっています。この課題に対して、当社では実践的な育成プログラムと外部専門家の活用を組み合わせたハイブリッドアプローチを推奨しています。
組織構造とプロセスの硬直化
大企業になればなるほど、意思決定プロセスが複雑化し、新規事業の機動的な展開が困難になります。既存事業向けに最適化された組織構造やプロセスが、事業開発の足かせとなることがあります。
製薬会社H社では、新薬開発向けの厳格なプロセスが、デジタルヘルス事業の展開を阻害していました。enableXの支援により、事業開発専用の組織とプロセスを設計し、アジャイルな事業展開を可能にしました。重要なのは、既存事業と新規事業で異なるマネジメントアプローチを採用することです。
失敗を許容しない文化
事業開発には必然的にリスクが伴います。しかし、失敗を許容しない組織文化では、挑戦的な取り組みが生まれにくくなります。
enableXが支援した機械メーカーI社では、「インテリジェントな失敗」という概念を導入しました。早期に小さく失敗し、学習を積み重ねることで、大きな成功につなげるアプローチです。この文化変革により、事業開発の提案数が3倍に増加し、成功確率も向上しました。
事業開発力を高めるための実践的アプローチ
経営層のコミットメント確保
事業開発の成功には、経営層の強いコミットメントが不可欠です。enableXでは、以下の要素を重視しています。
第一に、事業開発を経営アジェンダの最上位に位置づけることです。定期的な経営会議で進捗をレビューし、必要なリソースを確保します。第二に、長期的視点での評価制度を導入することです。短期業績だけでなく、将来価値創造への貢献を評価する仕組みが必要です。第三に、経営層自らが事業開発に関与することです。メンターとして、またはスポンサーとして、直接的に関与することで、組織全体にメッセージを発信します。
専門組織の設立と権限委譲
事業開発を推進するためには、専門組織の設立が有効です。enableXの支援企業の80%以上が、何らかの形で事業開発専門組織を設置しています。
重要なのは、この組織に十分な権限を委譲することです。予算権限、人事権限、意思決定権限を持たせることで、スピーディーな事業展開が可能になります。また、既存事業部門との適切な距離感を保ちつつ、必要な連携を図ることも重要です。
体系的な事業開発プロセスの構築
enableXでは、以下の5段階の事業開発プロセスを推奨しています。
探索段階では、市場機会の特定と初期仮説の構築を行います。検証段階では、顧客インタビューやプロトタイプ開発を通じて、仮説を検証します。設計段階では、ビジネスモデルの詳細設計と事業計画の策定を行います。立ち上げ段階では、最小限の投資で市場投入し、学習を重ねます。拡大段階では、成功モデルをスケールアップし、本格的な事業展開を図ります。
各段階でゲート評価を行い、継続・修正・中止の判断を下します。この体系的アプローチにより、リスクを管理しながら、成功確率を高めることができます。
外部リソースの戦略的活用
すべてを自前で行う必要はありません。enableXの分析では、成功している事業開発の70%以上が、何らかの形で外部リソースを活用しています。
スタートアップとの協業、大学との共同研究、他社とのアライアンスなど、様々な選択肢があります。重要なのは、自社の強みと弱みを正確に把握し、補完的なパートナーを見つけることです。また、オープンイノベーションの仕組みを構築し、外部のアイデアや技術を効果的に取り込むことも重要です。
学習する組織文化の醸成
事業開発の成功確率を高めるためには、継続的な学習が不可欠です。enableXでは、「Learning by Doing」のアプローチを推奨しています。
具体的には、定期的な振り返りセッションの実施、成功・失敗事例の共有、外部ベストプラクティスの研究などが含まれます。また、失敗から学ぶ文化を醸成することも重要です。失敗を責めるのではなく、そこから得られた学びを組織知として蓄積していくことで、次の成功確率を高めることができます。
enableXが提供する事業開発支援の価値

グローバルな知見とローカルな実践
enableXは、世界20カ国以上での事業開発支援実績を持ち、グローバルなベストプラクティスを蓄積しています。同時に、各国・各地域の特性を深く理解し、ローカライズされたアプローチを提供します。
例えば、日本企業がアジア市場に進出する際には、現地の規制環境、商慣習、消費者行動などを踏まえた事業開発戦略を策定します。グローバルな視点とローカルな洞察を組み合わせることで、成功確率を大幅に高めることができます。
ハンズオン支援と能力移転
enableXの支援スタイルは、単なるアドバイザリーに留まりません。クライアント企業のチームと協働し、実際の事業開発を推進しながら、同時に組織能力の向上を図ります。
プロジェクトの各段階で、enableXのコンサルタントがメンターとして関与し、実践的なスキル移転を行います。また、定期的なワークショップやトレーニングを通じて、体系的な知識移転も実施します。この「やりながら学ぶ」アプローチにより、持続的な事業開発力の構築が可能になります。
成功事例から学ぶ事業開発のポイント
製造業J社:デジタルトランスフォーメーションを通じた事業モデル革新
伝統的な製造業であるJ社は、enableXの支援のもと、製品販売型ビジネスからサービス型ビジネスへの転換に成功しました。IoTセンサーを活用した予知保全サービス、AIを活用した最適化サービスなど、デジタル技術を核とした新規事業を次々と立ち上げました。
成功の鍵は、顧客価値の再定義にありました。単に製品を売るのではなく、顧客の課題を解決するパートナーとしてのポジショニングを確立しました。また、段階的なアプローチを採用し、小さな成功を積み重ねることで、組織全体の変革を実現しました。
サービス業K社:エコシステム型ビジネスの構築
サービス業K社は、単独でのサービス提供から、複数のパートナーと連携したエコシステム型ビジネスへと進化しました。enableXは、エコシステムの設計から、パートナー選定、ガバナンス構造の構築まで、包括的な支援を提供しました。
重要だったのは、Win-Winの関係性を構築することです。各パートナーが明確な価値を得られる仕組みを設計し、持続可能なエコシステムを実現しました。現在、このエコシステムは業界標準となり、K社は中核的なポジションを確立しています。
事業開発における今後の展望
テクノロジーの進化と新たな機会
AI、IoT、ブロックチェーンなど、新たなテクノロジーの登場により、事業開発の可能性は大きく広がっています。これらの技術を活用することで、従来は不可能だったビジネスモデルが実現可能になっています。
enableXでは、テクノロジートレンドを常にモニタリングし、クライアント企業の事業開発に活用しています。重要なのは、技術ありきではなく、顧客価値を起点とした事業開発を行うことです。
サステナビリティと事業開発の融合
環境・社会課題の解決は、新たな事業機会を生み出しています。サーキュラーエコノミー、カーボンニュートラル、ソーシャルインパクトなど、サステナビリティを軸とした事業開発が注目されています。
enableXは、経済価値と社会価値を両立させる事業開発を支援しています。SDGsを事業機会として捉え、革新的なソリューションを創出することで、持続可能な成長を実現します。
グローバル化とローカライゼーションの両立
市場のグローバル化が進む一方で、ローカルニーズへの対応も重要性を増しています。画一的なグローバル展開ではなく、各地域の特性を踏まえた事業開発が求められています。
enableXのグローバルネットワークを活用することで、世界各地の市場機会を捉えながら、ローカライズされた事業展開を実現することができます。
まとめ
事業開発は、企業の持続的成長を実現するための最重要機能の一つです。環境変化が加速する中で、その重要性はますます高まっています。しかし、多くの企業が事業開発の実践において課題を抱えているのも事実です。
成功の鍵は、経営層のコミットメント、適切な組織体制、体系的なプロセス、そして学習する文化の構築にあります。また、外部リソースを戦略的に活用することで、成功確率を高めることができます。